visuals
drawings
process
description
敷地は東京大学の弥生キャンパス、西側の交通量が多い本郷通りに沿った長く緑地帯だったエリアである。
主なプログラムは、1.先に建つ弥生講堂)の補完機能、 2.社会人修士課程の研究室・講義室の確保
設計与条件は、・新たな木質構造の可能性、・人口乾燥のヒノキ材による新しい住宅構法の検討、・原則、流通材と接合金物による構法とする、・可能な限り既存の緑地を残す
大学の講堂は目的に応じ、規模や機能は様々だが、多くの場合遮光・遮音が条件になる。 セイホクギャラリーはHPシェル間のトップライトと開口部の日射しや周辺の樹々の緑が常に眼に入り、遮光・遮音性能が高いわけではない。都心に公園以外で多くの人が触れられる緑地はそう多くない。竣工して十分に高木が成長した今、利用者からは「森の中で催しをやっているようで、居心地がよい」と云われる。ともすれば過剰な性能が求められる現代建築において、周辺環境を十分に読み込み、運営の調整ができるならばこの木造建築でよいことがわかる。ここでは通常の会議やシンポジウムに加え、レセプション、ワークショップ、時にはコンサートが開催される。 今後も多くの人が、この建築と周辺環境を体感し、いろいろな使い方で楽しんでほしい。
セイホクギャラリーは、独立する8つのHPシェルが交互に連なっており、各HPシェル間は鉄骨のトラスでつながっている。各HPシェルは、境界梁にLVL(210×180)を用い、内部は相欠きに加工した合板t=12を格子状に嵌合させ、面材に合板t=9を両面2枚張としている。HPシェルは面材及び内部の嵌合部とも曲面なので材料をねじるのだが、曲率が大きいため製作方法から検討した。幾つもの縮尺の模型で空間はわかっているつもりだったが、建築として実現するには木質材料・構法を含めて構造の検討が必要があった。 そこで、私たちが1/2縮尺のHPシェルを作成し、その後棟梁と一緒にディテールを検討し、棟梁が原寸製作を、所長が加わり施工検討を行った。HPシェルは学内で構造計算と実験を行い、所定の性能を満たすことが確認された。 研究棟講義室は、大学と企業との研究成果である人工乾燥のヒノキ材(内部まで含水率が15%以下)を最長6m以下の流通材でトラスを組んだ一方向ラーメンである。このヒノキ材は寸法安定性が高く、四面背割のない構造兼仕上材である。最新の乾燥技術がもたらす性能を活かし、利用者に見て、触れて、心地よく感じてもらえる空間を実現した。 上記以外にも周辺環境や木質材料を活かす、素材やディテールを設計段階から各担当の職人たちと議論と試行を重ね実現させた。工事中も上棟式では餅まきを行うなど、木がもたらす文化の重要性を学内外の方にも知ってもらえるよう進めた。竣工時は地域住民や学外の人にも披露し空間を体験してもらった。 弥生講堂アネックスは、構造計算にはコンピュータによる立体解析プログラムを用い、HPシェル面のストレストスキンパネルの実現には学内で実験を行い検証した。また、使用する材料はHPシェルの境界梁にLVL、シェル面に構造用合板、といったエンジニアリングウッドや一般流通材を用い、接合には住宅用金物・構造用ビスを採用した。施工は棟梁の経験と知恵を活かし、特殊な工具や施工方法は採用せずに造ることができた。流通材や一般住宅用金物の使用は調達を含めてコスト調整しやすい。そして、棟梁たちの培ってきた一般的な構法による施工の延長で実現できる。そこに最先端の立体解析と実験を合わせて検証すれば、新たな木造建築は実現できる。